ここ近年で世間での認知度も高まってきた「ADHD(注意欠如多動症)」ですが、その症状などに対する世間や社会での理解度はまだまだ高いとは言えません。
そのような現状の中で就労や人間関係などに悩まされている人達も多いはずです。
本記事ではADHDをもつ人に向いている仕事や職種を紹介すると共に、その理由についても解説。
また、無料で受けられる複数の支援機関も紹介していきます。
目次
ADHD(注意欠如多動症)の症状や特徴、種類とは
ADHDとは「注意力や集中力が続かない」「衝動的に行動してしまう」「じっとできない」などの症状が見られる発達障害を指します。
先天的な脳の機能異常が原因で起こるものであること、さらに大人になってから自身のADHDに気づいた、または判明したという人も多いことも大きな特徴とされています。
また、現代では大きく分けて「多動症・衝動性」「不注意」「混合型」の3タイプに分類されています。
さらに、その療法も種類や症状によって大きく異なります。
→「ADHD(注意欠如多動症)の症状や特徴 | 相談先も紹介」の記事へ
ADHDの人に向いている仕事と向いていない仕事
ここから、ADHDの人に向いている仕事と向いていない仕事を紹介していきます。
ADHDの人が働く上での強みと弱み
まずは、ご自身がもつADHDなどの発達障害における”強み”と”弱み”を知り把握しておくことが大切です。
ADHDの人がもつ強みとして「独創的なアイデアを生み出す能力が高いこと」と「問題解決において新しい視点を提供できること」が挙げられます。
自分にとって興味のあるタスクや仕事内容への集中力が非常に高く、短時間で高い生産性を発揮することも可能です。
さらに、迅速に意思決定を行う能力も備わっており、緊急事態に対しても効果的に対応することも可能なケースもあります。
一方、弱みとしては「時間管理が苦手なこと」や「注意散漫になりやすい性質」が挙げられます。
自身で仕事の優先順位を決めることや納期または締め切り日の遵守が難しい上、遅刻や期限切れが頻発する傾向にあります。
また、自分の興味もてない分野や仕事内容に対しては集中力を維持することが難しい上、物事の整理整頓が苦手な傾向にあります。
そのような性質が原因となり、デスク周りや引き出しの中をごちゃごちゃにしてしまうことも多い結果、顧客情報などを始めとした重要な書類などを紛失してしまうという、トラブルや人間関係の悪化も招きかねません。
ADHDの人に向いている仕事とは
ADHDの人に向いている仕事とは主に「クリエイティブな仕事」「専門的な技術を活かせる仕事」「行動力を発揮できる仕事」の3つに分類できます。
まず、クリエイティブな仕事としては「広告デザイナー」や「ウェブデザイナー」など、PC等を利用しながら1人で進められる職業があります。
さらにアーティストとして小説や音楽作りに打ち込むこともお勧めです。
ただ、これらの職業は専門の学校などを卒業した若い人でさえもプロデビューはおろか、会社に入ることさえも難関な狭き門である点が大きなネックにもなっています。
そのため、プロデビューや本業として始めることに拘らず、副業やフリーランスとして行なうことも視野に入れておくことも必要です。
専門的な技術を活かせる仕事には「エンジニア」や「研究職」など、高度な専門性を必要とされる職業があります。
自分が強い興味や関心を持った分野に対して獣人離れした高い集中力を発揮できる特性を活かすことが可能です。
行動力を発揮できる仕事には「営業職」「起業家」「ジャーナリスト」などが挙げられます。
この辺は上記2種類とは違って”行動力の高さ”や”決断力の早さ”も求められますが、ADHDの人にはこれらの特性が高い傾向もあり、その強みを発揮することも可能となります。
ADHDの人に向いている職場や環境とは
会社内で円滑に働くには、単に仕事や職種だけでなく「会社や職場内の環境」も重要となります。
主に「柔軟な勤務体系」「突発性が少ない職場」「個人の強みを活かせる環境」の3つが挙げられます。
「柔軟な勤務体系」とは、主に自分にとって集中しやすい環境を選べる職場を指します。
ADHDの人は周囲の会話や騒音などに対して気が散りやすいことで”集中力を維持することが苦手”な傾向にあります。
そのため、仕事時間内は同僚たちの私語がない(または少ない)会社が適しています。
また、現代ではコロナ禍の影響でテレワークやリモートワークとして自宅内で働ける環境も増えているため、求職中はこの辺も検討してみると良いでしょう。
「突発性が少ない職場」に入ることも重要です。ADHDの人はタスクの優先順位を決めたり、マルチタスクをしたりすることを苦手としています。
そのため、上司や同僚から突発的な指示や業務変更などを言い渡されるだけでも自分の仕事のリズムを崩されてしまい、これまで円滑に進められてきた仕事や業務内容すらも上手く進められなくなる傾向も強いのです。
「個人の強みを活かせる環境」の会社に入ることができれば、ADHDの人も自分の得意分野で大きな成果を出すことも可能となります。
ADHDの人に向いていない仕事や環境について
ここからは上記までとは真逆に、ADHDの人に向いていない仕事や環境について解説します。
ADHDをもつ人にとっては耳の痛い話になるかもしれませんが、自分の苦手とする分野や環境を把握しておくことも円滑かつ円満に働いていくためには必要不可欠なことになります。
向いていない仕事や環境には「スケジュール管理の細かさ」「長い集中力」「マルチタスク」の3つが挙げられます。
「スケジュール管理の細かさ」を求められる仕事には主に秘書や経理などが入りますが、これらの仕事は厳密なスケジュール管理を求められる上、遅延の発生だけで大きなトラブルにまで繋がりかねないことも多いです。
「長時間の集中力を求められる仕事」もADHDの人には難しい、またはハードルが高いと言えます。
手術を行なう外科医や旅客機のパイロットなど”人の命を預かる仕事”がこのような仕事とされています。
これらの仕事では長い集中力を求められる上、些細な注意欠陥などで起こす医療ミスや操縦ミスという過失が原因で、患者や乗客の命を奪ってしまいかねません。
「マルチタスクが求められる仕事」もADHDの人には向いてなく、一度に複数もの業務をこなすだけでも苦手な上、優先順位を決められないまま仕事を進行できない結果、業務の遅延につながることも多いのです。
ADHDの人の就職や転職の大きなポイント
ここからはADHDの人が就職や転職をするための大きなポイントを解説しながら、相談できる専門機関も紹介していきます。
オープン就労のメリットとデメリットについて
ADHDなどの発達障害をもつ人が就職活動をする中で、まず始めに悩まされるのが「オープン就労をすべきしないべきか?」ということにあると思います。
「オープン就労」とは、自分の障害を会社に知らせた上で仕事に臨む働き方を指します。
それに対して知らせぬまま働くことを「クローズ就労」と呼ばれます。
オープン就労でのメリットには「合理的配慮を受けられること」や「定着支援」「職場や周囲からの理解」が挙げられます。
「合理的配慮」とは自身の障害に応じた業務内容や職場環境の配慮が受けられることにより、働きやすい環境を得られることを言います。
そのような合理的配慮を受けるためには自分だけで会社を探すのではなく、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)など、リワーク支援を提供している施設などからの「定着支援」も受けられることによって、その職場への定着率も高まります。
さらに「職場や周囲の理解」も得られることで、自身の不安やストレスを軽減した状態で働きながら、自分の強みや能力を高く発揮していくことも可能になります。
その一方でオープン就労には「職種の選択肢が限られる」というデメリットもあることを忘れてはいけません。
まず、障害者雇用枠では働ける仕事や職種が限られているのが現状であるため、特定の分野では自分の能力をどんなに高く出せても出世や昇進などに繋がりにくいのです。
さらに会社によっては、応募や面接の段階で自身のADHDなどの障害を公表しただけで不採用にされてしまうケースも少なくはありません。
「合理的配慮」とは
上記で記載した「合理的配慮」という用語に聞き慣れていない人が多いのも現代社会の現状です。
合理的配慮とは「障害をもつ人達が障害のない人達と一緒に平等に教育や就業、社会参加ができるよう、行政・学校・企業などの事業者が可能な範囲内でそれぞれの障害特性や悩み事に合わせておこなわれる配慮」のことを言います。
さらに「2024年(令和6年)4月1日から義務化されたこと」により、これからは障害をもつ人達はもちろん、健常者として働けている人も「知らなかった」などの返答は済まされないことも忘れてはなりません。
実際、現在では多くの学校や会社で合理的配慮における政策も実行されています。
学校・会社を含めて全体的に実行されている政策としては主に「バリアフリーなどの観点を踏まえた障害の状態に応じた適切な施設整備」や「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士及び心理学の専門家等の確保」「点字や手話、デジタル教材等のコミュニケーション手段を確保すること」が挙げられます。
また、合理的配慮についてはこちらの記事でも解説していますので参考にしてみてください。
→「ADHD(注意欠如多動症)の症状や特徴 | 相談先も紹介」の記事へ
障害者雇用枠として働くことのポイント
ADHDなどをもつ人の中には「障害者雇用枠」を上手く利用することで円滑に働いている人達も多いです。
障害者雇用枠を利用して向いている仕事を選ぶポイントとは「自分の特性を説明できるようにすること」です。
また、前もって障害特性を整理した資料などを準備しておくことも、面談などで自身の症状を上手く説明しやすくするために大切です。
また、ここ近年では自身の障害などによる事情でテレワークやリモートワークを希望する人も多いですが、そのような勤務体系が可能か否かは求人情報だけでは分からないことも多いです。
そのため、Web検索などで情報をしっかりと集めることを始め、障害者雇用に強い転職エージェントに相談してみることも重要となります。
さらに、そのような支援機関では気になる会社や企業に対する疑問や不安なことも気軽に聞くことができる点も大きなポイントです。
ハローワークの職業訓練を受けてみることも大切
ADHDなどの症状を抱えながら働くためには、自身の症状や障害の特性に合った業務に就くこと、さらに上司や同僚からの理解や配慮のある環境選びが重要です。
自身が希望する就職や転職の実行にあたり、上記までに記載した支援機関の利用や相談も大切ですが、ハローワークで実施されている職業訓練を受けてみることも大切です。
もちろん職業訓練を受けられたからと言って、自分がその職業や業務に就ける保障があるわけではありません。
それでも訓練として行なってみることで「自分に向いている仕事や職種」を新たに発見できる可能性も大きいです。
反対に訓練の段階でも辛いと感じた場合にも「自分には向いていない」という異なる発見も可能となり、就職や転職活動を行なう際にその職業を避けながら進行させていくこともできるため、それもまた”1つの大きな収穫”と実感できると思います。
まとめ
今回はADHDをもつ人に向いている仕事や職種を紹介すると共に、その理由についても解説しました。
一口に向いている仕事や環境とは言っても複数にわたって存在しており、それ故に迷いながら「自分に合った仕事や職種を把握できない」と悩む人も多いです。
就職や転職を始め、仕事そのものもどうしても上手くいかずに辛い時は1人だけで悩まずに、転職エージェントなどの支援機関に相談してみることも大切です。
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