復職・リワーク

ASDの人に向いている仕事 | 効率的な探し方で悩みも解消

ここ近年でよく聞かれるようになった「ASD」という言葉に興味や関心を持ち始める人が増える一方、その症状で悩まされている人も多いのが現状です。

本記事ではASDの特徴について解説しながら、向いている仕事や職業に加えて効率的に仕事や勤務先を探す方法について紹介します。

ASD(自閉症スペクトラム)の特徴について

ASD(自閉症スペクトラム)は”発達障害の1つ”とされており、自分のやり方に強いこだわりをもつ余りに「人との協同作業やコミュニケーションを強く苦手としていること」が大きな特徴です。

特に対人関係で悩む人が多く、一例を挙げると「相手の思いや気持ちを読み取ることが困難」かつ「人への興味が薄い」とされています。

また、自分の思考にも両極端な一面もあり「好きなことへの集中力や追求力が高い」という長所もある一方で「自分の興味ないことには極めて無関心」という短所も併せもっています。

さらに「音や匂いに対する感覚過敏」に悩まされている人も多いようです。

ASD(自閉症スペクトラム)をもつ人が抱える悩みとは

ASDをもつ人は先に挙げた特徴により、会社や学校での対人関係で悩む人が多いです。

ここでは、実際に起きた対人関係でのトラブルにおける悩みについて紹介します。

上司や教師から注意されると冷静さを保てない

ASDをもつ人の場合、自分のミスや間違いを上司や教師から注意されるだけで冷静さを保てないばかりか、過剰に反応しながらパニック症状に陥ることもあります。

これには自分流の働き方やルールを貫き通してきたために発生したミスであることも多いのですが、自分に対する注意内容があまりにも抽象的だったり一方的すぎたりする場合にはその相手の意図を完全に理解しきれないまま、同じミスや間違いを繰り返す傾向もあります。

チームでの作業や協力が苦手

先に挙げた”自分のやり方”を重視してしまう傾向により、チーム内での協同作業に対して苦手意識を強くもってしまう点もASDの特徴の1つです。

同じチームや組織の人達が自分のやり方とは異なる方法や手段に対して強い違和感や嫌悪感を抱きやすい上、人の気持ちを読み取ることが不得意なだけでも周囲からは”自己中心的”や”協調性がない”という印象を強く抱かれてしまうことも多いのです。

その場の空気を読みながらの会話や発言が苦手

人の気持ちに加えて、その場の空気を読みながらの会話や発言を苦手であることもASDの大きな特徴と言えます。

自分では何の悪気がないつもりでも同僚や上司に対して不快な発言や態度を出してしまい、会社などでの雰囲気を悪くさせてしまうこともあります。

仮に会社内での人達の理解を得られていたとしても問題は営業職などによる「得意先や契約先との接待や交渉事」です。

同じ会社や職場の同僚とは違い、他社の人達からの理解を得られることなど、そうそうありません。

大事な契約事などで失礼な発言や態度を取ってしまうだけで、自分だけではなく会社そのものの信頼を失墜してしまう深刻な事態に陥るケースも意外と多いのです。

マルチタスクに対してパニックを起こすことも多い

ASDの人は複数の仕事や業務を同時進行させることが苦手です。

仮に実行した末に自力で完了させられた場合でも、上司や同僚からは信じられないようなミスもしていたという結果になりがちです。

現代社会では”マルチタスク”と呼ばれながら、1人で複数の仕事や業務をこなさなければならない状況が当たり前とされていますが、この点もまた、ASDの人を大いに悩ませている原因とされています。

仮に自分の好きな仕事をできる会社に入れた場合でもチーム作業やマルチタスクに上手く順応できない結果、早期に退職してしまう問題に悩まされるケースもあります。

ASD(自閉症スペクトラム)の人がもっている強みとは

様々な症状や性質で悩まされやすいASD(自閉症スペクトラム)ですが、その一方で強みも複数あります。

ここでは、そのような強みについて紹介していきます。

興味ある仕事に集中できる

ASDには独自のルールにこだわる傾向が強いですが「集中力を長く保てる」という強みもあります。

特に自分の好きななとや興味ある分野に対する集中力の持続力は常人を凌駕しています。

その理由としてASDの人達は長い没入感に加えて完璧主義な人も多いためです。

この辺も会社内での環境に大きく左右されますが、同僚たちの会話数も少ないなど、自分にとって集中しやすい労働環境であれば集中力の持続が良い方向に働き、完璧に仕上げることに加えて「作業時間の短縮化」につながることもあります。

他者よりも先にミスや間違いに気づくことも可能

常に完璧を目指すASDの人は、同僚や上司が見逃しやすいミスや間違いに気づける鋭さも併せもっています。

それにより、細かいミスや間違いを防ぐ形で資料や商品などを完成させることも可能です。

ミスや間違いが全くない形で提供することが当たり前と言われてしまえばそれまでですが、現代社会では仕事の多忙さや密度の高さによって思わぬミスや間違いが生まれてしまうケースも何気に多いのです。

そのような時代背景や労働環境だからこそ、ASDの人が自分の強みを活かすことでミスや間違いを解消させることは顧客や取引先からのクレームやトラブルを未然に防ぐことにも大きく貢献できるわけです。

正しい手順で安全性を保てる

ASDは決められた順番に沿って働くことにこだわる傾向が強いですが、それは真逆に考えると「仕事上での安全性を保てること」につながっています。

また、そのような特性は工場や工事現場など社員の安全性が重視される職業で大いに活かされる傾向にあります。

ASD(自閉症スペクトラム)の人に向いている仕事や環境について

ASDの人はチームで動く仕事よりも1人で黙々と進められる仕事の方が向いています。

ここでは、そのような向いている仕事や職種を紹介していきます。

経理やプログラマーなど、1人で出来るPC作業

ASDの人は経理やプログラマーを始めとした1人で出来るPC作業に向いています。

ただ、経理やプログラマーの場合はそれらの専門的な知識が多く求められており、それらを学んで習得するための時間や労力もかかることが難点です。

そのような時間や労力を割けない人の場合、まずは簡単にできるデータ入力やWebライターから始める方法もあります。

データ入力やWebライターの仕事だけで会社に入ることは難しいですが、現代ではランサーズやクラウドワークスを始めとした単発契約で働く手段も多く用意されています。

また、経理やプログラマーにおける知識や資格を得られた場合でも会社に採用されるまでの道のりはかなり険しいと言えます。

そのため、かなり大変な方法となりますが、これらの仕事でもまずは単発契約での仕事で経験を積みながら就職活動を並行することも可能です。

飲食店での調理士や料理人

飲食業は”ブラック”という印象を抱かれがちですが、それも実際に働くお店や職種によって大きく変わります。

しかしASDの人なら調理場で黙々と料理に没頭できる調理士や料理人もお勧めです。

しかし、その一方でオーダーやレジ係などの接客業ではお客からの注文や言い分で慌てながらパニック症状に陥ってしまう危険性が高いため、極力は避けた方が無難と言えます。

さらに、ここ数年ではコロナ禍の影響により、いきなり不当かつ理不尽な解雇を言い渡されてしまうケースも増えています。

そのため、調理士や料理人を目指す場合はこれらの事態にも対応できるようにするため、働きながらも他に募集をかけているお店を探して見つけておくことも大切です。

発想やセンスを活かせるデザイナー

ASDの人には独自の発想をセンスをもっている人も多いため、Webデザイナーや漫画家、イラストレーターなどの職業にも向いています。

しかし、これらの仕事で生活していけるようになるまでのハードルが非常に高いため、一度目指してと途中で断念してしまうケースが多いことも事実です。

また、現代ではWebデザイナーの仕事で会社に入ることも難しい状況にもなっています。

そのため、これらの職業はほぼ完全にフリーとして働くことになりますが、先に紹介したWebライターやデータ入力と同じくランサーズ等の単発仕事に応募して始めてみることも1つの方法です。

個人事業主となって起業する方法もある

ここまで紹介してきた結果、ASDの人は会社員や従業員になるよりも自分から個人事業主となって起業する方法の方が成功しやすい傾向もあります。

もちろん、個人で事業を起こす以上は税務署での手続きや仕事管理など全て自分でこなせなければならないため、始めは会社勤め以上の苦労や労力を避けられません。

それでも1つずつこなしながら波に乗ることにより、会社員として働くこと以上の収入や達成感を得られるチャンスにも存分に恵まれています。

ASDの人が仕事を探すための就労支援機関を紹介

最後はASDの人が仕事を探すための就労支援機関について紹介していきます。

自分1人だけで探すよりも国に設置されている公的機関などの協力を得た方が効率良く仕事を見つけられることも多いです。

ハローワーク等の公的機関

現代ではリクナビ等の求人サイトも当たり前となっている時代ですが、それでもハローワーク等の公的機関も必要不可欠となります。

ハローワークでは基本的に求職者が自分で求人を検索する仕組みとなっていますが、それだけではなく、職業相談員がASDの特性をもつ人に合わせて適切な仕事や職業、働き方などを提案してくれるサービスもあります。

さらにASDの人に向けた求人の紹介やジョブコーチ支援など手厚いサービスを受けることも可能な場所もあるため、それらを上手く利用することで効率的かつ比較的早い段階での就職が可能なケースもあるのです。

障がい者のための支援センターもお勧め

障がい者就労支援センターや生活支援センターに行ってサポートを受ける方法もあります。

障がい者就労支援センターは地域ごとに設置されている就労支援機関であり、自分やご家族の希望に応じて職業の相談に加えて、職場定着支援や就職準備支援などを受けることが可能です。

さらに実習支援の一環として「職場の環境調整」なども実施されているため、利用者と企業や会社との円滑なコミュニケーションを取るための対策も行なっています。

また、生活支援センターではハローワークを始め、支援学校や医療機関等との連携で障害をもつ人への雇用促進も進めています。

病院や福祉施設のサポートを受ける方法もある

病院や福祉施設で実施されている「リワーク」を利用する方法もお勧めです。

病院や福祉施設を利用したそれぞれのリワークの方法があり、病院では基本的に”症状の回復と再発防止”を目的として体調管理やカウンセリング等の医療的ケアを中心に行なっています。

一方福祉においては、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などでリワーク支援を提供している施設があり、そこでは”安定した日中活動のリハビリから仕事に必要なスキルの習得”といった社会生活から仕事のための支援・訓練を行なっています。さらに企業との連携をはかっているため、就職だけでなく復職者が自分の就いた会社で定着できるためのサポートまでしてくれます。

まとめ

今回はASD(自閉症スペクトラム)の特徴を解説しながら、各々が抱えている悩みや強みについて紹介しました。

まずは自分のもつ強みを知ることが始まりであり、その強みを上手く活かせるようになれてこそ就職や復職に到達できるものと思われます。

それでも1人だけで就職活動を全うすることは難しい面もあるかもしれません。

しかし、ご家族の協力や公的機関のサポートなどを受けることも効率的に仕事や勤務先を見つけられることもあります。